電圧をかけることによって一定の電荷を蓄えることができる電気パーツをコンデンサー(もしくはキャパシター)といいます。
従来のコンデンサーは少量の電荷だけ蓄えられるため、電圧の安定化や交流電流のフィルターに使われています。
近年では特殊な機構により大容量の電荷が蓄えられるようになり、電池としての利用の期待も高まっています。
今回はそのコンデンサーの基本的構造を解説していきます。
電気力線
点電化が電場$E$を発生させるというのはやりました。
この電場が一直線に拡散する線を電気力線といい、とある電荷から飛び出す電気力線は常に一定です。
面積$dS$を通る電気力線の本数は$E\sinθ・dS$で定義されます。 $θ$は平面と電場の向きの角度となります。
電荷Qをもつ点電化から拡散する電気力線を想定しましょう
図のように球体状に拡散していきます。
半径$r$の球体をとって、その表面に発生する電場が$E=k\frac{Q}{r^2}$となり、これは全ての表面で同じになります。
電場の方向と球表面は常に垂直なので、定義に従って、球面を通る電気力線の本数を計算すると、
$N=E・S$
$ = k\frac{Q}{r^2} ・4πr^2$
$ = 4πkQ $
つまり、電気力線は半径$r$によらずに一定であることがわかりました。
逆に、無数の電荷が作る電場を知りたかったら、
$$E=\frac{4πkQ}{S}$$
を計算すれば求まります。
コンデンサーの電気容量
電荷Qだけ帯電した板を考えます。
この板から発生する電場は横方向は打ち消しあい、縦方向だけ残ります。(厳密には両端付近では横方向も少し残りますが、無視できるものとします。)
そのため、電気力線の方向も縦方向に飛び出ると考えることができます。
両端があるため、それぞれ両端から$2πkQ$の電気力線が出ていくのがわかります。
これのプラスの電荷の板とマイナスの電荷の板を平行に並べたものがコンデンサーとなります。
コンデンサーにはさまれている所はあわせて$4πkQ$の電気力線が通っています。外部は打ち消しあい、電気力線が外には出ないようになっています。
コンデンサーの板の面積を$S$とし、二つの板の幅を$d$とすると電気力線の定義から
$ES=4πkQ$となることがわかっているため、
電場$$E=\frac{4πkQ}{S}…①$$
と表せます。
別の視点からも電場を表すこともできます。
コンデンサー間の電圧が$V$のときは、幅が$d$なので内部の電場は
$$E=\frac{V}{d}…②$$
となります。
①,②の式から
$$ \frac{4πkQ}{S} =\frac{V}{d} $$
となり、コンデンサーの電荷$Q$は
$$ Q=\frac{1}{4πk} \frac{S}{d}V $$
$ \frac{1}{4πk} $は誘電率とよばれ、コンデンサー間に挟まっている物質によって決まります。
誘電率を$ε$(イプシロン)とおくと
$$ Q= ε\frac{S}{d}V $$
となります。
また、コンデンサーの電気容量を$C=ε\frac{S}{d}$とおくことで、
$$ Q= CV $$と表すことも多いです。
コンデンサーの合成
・並列
電気容量がそれぞれ$C_1$と$C_2$のコンデンサーを並列に接続します。
二つのコンデンサーの間の電圧は同じになります。
このときふたつに蓄えられている電荷の合計は
$Q=Q_1+Q_2=(C_1+C_2)V$
となり、
電気容量
$$C=C_1+C_2$$
の一つのコンデンサーとしてみなせることがわかります。
・直列
電気容量がそれぞれ$C_1$と$C_2$のコンデンサーを直列に接続します。
このとき、中央部分は孤立しているため、電荷の合計は0になります。
よって、ふたつに蓄えられている電荷はどちらも$Q$となります。
コンデンサーの両端の電位差は
$V=V_1+V_2=(\frac{1}{C_1}+ \frac{1}{C_2} )V$
となり、
二つのコンデンサーは一つのコンデンサーとしてみなすことができ、電気容量の逆数は
$$\frac{1}{C}= \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2} $$
となります。
※注
それぞれ、電圧や電荷の条件を満たさなければ合成コンデンサーとして見なすことはできません。
その場合は、電圧の式と孤立した部分の電荷の合計値の式から求めることになります。
静電エネルギー
コンデンサーに蓄えられた電荷を静電エネルギーと言います。
静電エネルギーを求めるためにまず、上のプラス側の極版がどれだけの力で引かれているかを考えます。
コンデンサー内には電場が発生していてそれによって力を受けます。
しかしその電場にも二種類あり、プラス電荷が作る電場とマイナス電荷が作る電場があります。
しかし、自分側の極板が作る電場からは力を受けることはありません。(図の青い矢印)
そのため、青の極板は赤の極板の作る電場の影響のみの影響を受けます。
赤の極板の作る電場は
$$E_-=\frac{2πkQ}{S}=\frac{Q}{2εS}$$
よって受ける力は
$$F=QE_-=\frac{Q^2}{2εS}$$
それだけの力を受けている状態で、プラスからマイナスを距離dだけ引き離すのに必要な仕事は
\begin{align}
U&=\int_0^d{Fdx}=Fd\\
&=\frac{Q^2d}{2εS}\\
&=\frac{Q^2}{2C}
\end{align}
これが静電エネルギーとなります。
誘電体
コンデンサー内の一部に誘導体を挿入する場合を考えます。
誘電体を挿入するにしたがい、電気容量$C$は増えていきます。
誘電体を挿入するとき、誘電体が入っている左側と、誘電体が入っていない右側に分けることができます。
実質的にこの二つのコンデンサーが並列にならべているのと同じ扱いができます。
また、コンデンサーの幅が誘電体と等しくない場合は、直列に分けて考えることもできます。
下左の図は下右図と同じような扱いができます。
また、電源をつないでいるときと、なにもつないでいないの2パターンが考えられます。
・電源をつないでいるとき
このときコンデンサー間の電圧$V$が一定になります。
このときコンデンサーに誘電体を挿入するにしたがい、電気容量が増えるため、電荷が増加していきます。
静電エネルギーは
$U=\frac{1}{2}CV^2$
から$C$だけ増えるので、エネルギーは増加します。
・何もつないでいないとき
このときコンデンサーにたくわえられた電荷$Q$が一定のままです。
静電エネルギーは
$U=\frac{Q^2}{2C}$
から$C$だけ増えるので、エネルギーは減少します。
まとめ
コンデンサーに電圧$V$をかけると$V=CV$の電荷がたまる。
コンデンサーの持つ静電エネルギーは$U=\frac{1}{2}CV^2=\frac{Q^2}{2C}$
電気容量は$C=ε\frac{S}{d} $
$ε$は誘電率といい、間に誘電体を挟み込むことによって大きくすることができる。