名問の森Ⅱ 46 解説

並べる順番が違えど、RLC並列回路で考えることはかわりません。
三つのうち一つに流れる電流がわかっているため、他に流れる電流は同じになります。
あとは、それぞれのパーツごとの電圧差を考えることになります。
こちらの、RLC直列回路を参考にしていきます。
(1)図2から、流れる電流は角振動数$ω=\frac{2π}{T}$とすると
$$I=I_0\sin{ωt}$$
となることがわかります。
それぞれの電圧は
$V_R=RI= I_0\sin{ωt} $
$V_C=\frac{Q}{C}= \frac{\int{Idt}}{C} = -\frac{1}{ωc}I_0\cos{ωt} $
$V_L=L\frac{dI}{dt}= ωLI_0\cos{ωt} $
となります。
図2の電圧は$+\cos$の形になっていることから、コイル$V_L$とわかりますね。
いわゆる、コイルの電流は(電圧に対して)位相$\frac{π}{2}$だけ遅れるというやつです。

まだYとZがわからないので、図3からきめていくことになります。
もしYがコンデンサーだとすると、下図のようにスイッチを入れた直後はコンデンサーを素通りし、十分時間が経った後はコイルを素通りしていくため、流れる電流は同じになります。(厳密にはLC並列回路の過渡現象というものですが、高校範囲で扱うことはありません。)


よって、Yは抵抗であると思われますが、実際に見てみましょう。
下図のようにスイッチを入れた直後は抵抗にのみし電流が通り、十分時間が経った後はコイルを素通りしていくため、流れる電流は大きくなり条件に合致しそうです。
$20[Ω]$の抵抗を$R_3$とすると、左で流れる電流が$I_0=\frac{E}{R+R_3}$でこれが2[A]、 右で流れる電流が$I_∞=\frac{E}{R_3}$でこれが5[A]となることから、
$$R=30[Ω]$$


以上から、回路を書くと下のようになります。

コイル間の電圧の最大値は
$LωI_0=V_0$より
$$L=\frac{V_0}{ωI_0}=0.32[H]$$

コンデンサー間の電圧の最大値は
$\frac{1}{ωC}I_0=V_1$より
$$C=\frac{I_0}{ωV_1}=2.5×10^{-4}[F]$$

(2)三つのパーツのうち、電力を消費するのは抵抗だけです。
そのため、$W=R(\frac{I_0}{\sqrt{2}})^2=60[W]$

(3)コンデンサー間の電圧が0になるのは$\cos{ωt}=0$つまり、 $ωt=\frac{π}{2}, \frac{3π}{2}, \frac{5π}{2}$となります。
よって時刻は$t=\frac{1}{4}T, \frac{3}{4}T,\frac{5}{4}T $から、$1.0×10^{-2}, 3.0×10^{-2}, 5.0×10^{-2} $


(4) $t= 1×10^{-2} =\frac{1}{4}T$のとき、 $ωt=\frac{π}{2}$から $\sin{ωt}=1, \cos{ωt}=0$なので、
$V=V_R+V_C+V_L=RI_0+0+0= RI_0 =60[V]$

$t= 4×10^{-2} =T$のとき、 $ωt=2π$から $\sin{ωt}=0, \cos{ωt}=1$なので、
$V=V_R+V_C+V_L=0-X_CI_0+ X_LI_0= 50[V]$

(5)

コイルに流れている電流が瞬間的になくなることはないため、スイッチを開いた直後にコイルに流れる電流は$I_∞=\frac{E}{R_3} $となります。
よって抵抗感の電圧差は$RI_∞= 150[V]$で、bの方が高くなります。
よって$V_a=-150[V]$

また、コイルのエネルギーがそのまま抵抗で消費されるため、
$W_R=\frac12LI_∞^2=4.0[J]$



補足
並列RL回路の回路の方程式は
$0=L\frac{dI}{dt}+RI$
よって
$$ \frac{dI}{dt}=-\frac{RI}{L}$$
となるため、この微分方程式を変数分離で解くことができます。

$ \frac{dI}{I}=-\frac{R}{L}dt$
を積分して積分定数を$A$とおくと
$\log{I}=-\frac{R}{L}+A$
より
$I =e^Ae^{-\frac{Rt}{L}}$
初期値から $e^A=I_∞$とわかるため、
$$I =I_∞e^{-\frac{Rt}{L}}$$
となります。
抵抗での時間当たりの消費電力は
$$P=RI^2= RI_∞^2e^{-\frac{2Rt}{L}} $$
なので、
$$W=\int_0^∞{Pdt} = \left[- \frac{1}{2}LI_∞^2e^{-\frac{2Rt}{L}} \right]_0^∞= \frac{1}{2}LI_∞^2 $$
とコイルのエネルギーと一致することが確認できました。